組織の中には必ずと言って良いほど「仕事をしない」人間がいるものだ。何故に仕事を命じても行おうとしないのか。
それにはいくつかのパターンがある。

  • 単なる無能
  • 上司に反感を抱いていて、上司の言うこと全てに反対の立場を取る
  • 上司よりも自分の能力が上だと考え、上司の言うことをバカにしている
  • 仕事よりも家庭が大切。マイホームパパ。

いずれも管理職としては扱いに困る厄介者だ。こういうタイプの部下に振り回され、管理職の方が精神的に参ってしまうことさえある。
こうなると管理職は「触らぬ神に祟り無し」と、このような部下に対しては腫れ物に触るような態度で接する。せめてなんとか嫌われないようにと、そうした部下に調子を合わせるようなってしまう。上司が卑屈になればこういう部下はますます増長するばかりだ。

 

細川忠興は将軍の徳川秀忠に仕え、重用された人物である。
忠興は部下の管理術に独特の考え方をしていた。部下を「将棋の駒」に例え、それぞれの性質の違いや得手不得手をしっかりと把握し、適材適所に配置する人事の達人だったのである。

 

忠興は上記のような部下に対して容赦しなかった。彼は「仕事を命じてもやらない部下」に二回、注意を行う。
1回目は「仕事に何か不満があるのか?」と尋ねる。部下が「ありません」と言いながらも態度を改めない場合、二回目の注意を行う。
「私に不満があるのか?」と。この部下がYESと答えた場合、更に「どこが不満なのか?」と尋ねる。部下は自分の理想とする上司のイメージを色々と述べる
忠興はじっと耳を傾け部下に言いたいだけ言わせる。そして一言「お前を異動させるバッサリ切り捨てるのだ。

唖然としている部下に、更に忠興は話を続ける。
お前が理想の上司イメージを持っているように、私も理想とする部下のイメージがある。お前はそれに適合しない。だから異動させる」

部下は顔色を失って言う。私のことが嫌いということですか?」
忠興は答える。それは理由の一部に過ぎない。むしろ、お前の方が私を嫌い、私のことを否定している」
部下は増長の鼻をへし折られ、立場を失ってしまった。

しかし忠興は優しい一面もある。普通ならこれで部下との会話は終わりだが、忠興は説明を続ける。
仕事に関しての意見の食い違いならば歩み寄れる可能性があるが、好き嫌いという感情論ではどうにもならない。」
「我々はお互いに嫌いなのだからどうにもならないのだ。別れた方がお互いの為
だから、私の元から去れ。どこにでも好きなところに行くがよい」

 

通常、管理術の面では「期待される上司像」ばかり求められて「期待される部下像」というのはほとんど議論されることが無い。実に理不尽極まる。しかも、そういう厄介者でも使いこなせないと中間管理職は能力不足を問われてしまう。

しかし、部下の中には相性が悪くてどうにもならない者もいる。まして「嫌悪感」まで互いに抱いていては接触点は皆無だ。こういう場合、早々に切り捨てるのが得策なのである。

細川忠興はそれをビシッと行った。それが組織のためであり、他の社員のためだと考えたからである。
これが将軍徳川秀忠の重鎮、細川忠興部下の管理術なのである。